ハリネズミの繁殖について
ハリネズミを飼うと、自分のハリネズミの遺伝子を残したい!子供が見てみたい!もっと多くのハリネズミを育てたい!など、繁殖に興味が出て来る飼い主さんは多いですね。
しかし、ハリネズミの妊娠・出産・子育ては大変です。
繁殖中のハリネズミは普段とは全く違う動物のように神経質になり、今まで馴れてくれていた飼い主であろうと、威嚇したり、噛み付いたりするなど、近づくことすらできない状態になることも多いのです。
そのため、繁殖はハリネズミの心身に掛かる負担も去ることながら、飼い主さんにとっても、大きなストレスになります。
自分のミスでせっかく生まれた赤ちゃんが命に関わる状態に陥った、などというケースでは真面目な飼い主さんほど、心労が大きくなります。
ハリネズミの繁殖は良いことばかりでなく、大きなリスクを伴っているということを理解した上で行って下さい。
ハリネズミの子供が親離れするまでの期間
ハリネズミは平均して、35日程の妊娠期間を経て、一度に3~4匹の子供を生みます。
子供は、生後6~8週間で母乳を飲まなくなり、親と同じ固形食を食べられるようになります。
そうなれば離乳したということですので、母親から離れ、1匹ずつでの生活ができるようになります。
つまり妊娠期間の35日と育つまでの8週を合計し、91日という長い日々が繁殖期間ということになります。
この間ずっと、ハリネズミと飼い主さん共にストレスが掛かるのだという事を、ここでよく考えて欲しいのです。
こんな長い間耐えられない、と考えるならば繁殖はしないほうがよいでしょう。
動物の命の考え方
前述の通り、ハリネズミが出産すると一気に3~4 匹生まれます。
つまり、責任を持たなければいけない命の数が数倍になります。
3~4匹はあくまで平均なので、多い場合は10匹以上生まれることもあります。
急に変わった環境下で、この全ての命をあなたは責任をもって育て覚悟はありますか?
ハリネズミは単独飼育が原則です。
離乳を迎えると子供の数だけケージが必要になります。
ケージが増えるということは、置き場所が必要になります。
食料も生まれた分増えます。
かかる費用も時間も労力も全てが増えるのです。
更に、一匹が病気になると、感染症なら親・子供全てに感染してしまう可能性が大いにあります。
病院に全員連れていく必要が出てきますので、医療費もその分かさむことになります。
このようなこまごまとした多くの負担を背負って、ハリネズミが寿命を全うするまで育てきる覚悟が必要なのです。
もちろん、里親に出すという方法もあります。
そのことについては後述させて頂きますが、里子に出せるのは、最低でも離乳を済ませてからとなります。
そして、里親が見つからない場合は、自分で育てきる必要があります。
生き物を捨てる行為は法律で禁止されています。
特にハリネズミは、特定外来生物に指定されている種類もあり、現在は飼育が許可されているヨツユビハリネズミも、捨てられることで野生化し、日本の生態系に影響を及ぼすと判断されると、外来指定生物に指定され、飼育できなくなる可能性が高くなります。
そうならないように、飼い主は責任を持つ必要があります。
そのため、里親は誰でも良いわけではありません。
しっかり、その子を育ててくれる里親かどうか見極めるのもあなたの仕事になります。
その見極めを誤ったため、里子に出した子が亡くなるなどした場合は、里親に責任がもちろんありますが、その里親に譲渡したあなたの責任も大きいと考えて下さい。
ハリネズミは飼いにくい生き物です。
里子に出した子を殺さないにしても、飼いきれず、外に放す人もいます。
そうならないように、私がここに書いている事を全てしっかり理解したうえで里親に説明し、更にそれを理解し責任を持って育ててくれる人にのみ譲渡してください。
生まれた子の命がどのような物か、里親に出すということが、どのようなリスクを持っているのかを理解してください。
母親ハリネズミへの責任
出産、子育ては、母親ハリネズミに大きな負担を与えます。
飼い主さんでも出産、子育てを経験したことがある人は分かると思いますが、命がけの行為ですよね。
最悪の場合、出産直後に母親が死亡してしまうこともありますし、出産を経験することで寿命が縮まるとも言われています。
そんなリスクがある中、本当に自分のハリネズミに出産をさせたいですか?
そこをしっかり考えなければなりません。
もし、それでも繁殖をさせると言うなら、自分のハリネズミが妊娠、出産、子育てに耐えられる状態なのかを的確に見極める必要があります。
犬や猫など身近なペットでもそうですが、初めての出産を経験したハリネズミは、出産後パニックになり、子食いや育児放棄をすることがあります。
そんな場合は、飼い主さんが人工哺育する必要がでてきますね。
飼い主さんには、死んでしまった子に対する悲しみ、そして母親ハリネズミに対して大きな負担をかけてしまったという罪悪感が残ることでしょう。
人間にはわかりませんが、母親ハリネズミも大きな悲しみの中でもがいているかもしれません。
そんな思いを自分の子にさせたいですか?
子食い、育児放棄について
動物は、自分の子供を育てられないと判断したときや、子供に奇形や虚弱などがみられ、生きていくことができないと判断した場合に子食いや育児放棄をします。
飼育下で子食いや育児放棄が起きるのは前述の理由の他に、環境が原因である場合が多いです。
母親にストレスを与えることで発生します。
母親は、ストレスを感じると、子を育てられないと考えます。
そうなると子食いや育児放棄を行います。
このストレスは何がストレスになるかはわかりません。
その為、細心の注意を払う必要があります。
飼い主さんの環境管理のミスで子供の命を奪うことになりますので、飼い主が負うべき責任は大きいものです
これはハリネズミだけに限らず多くの動物で起きる現象です。
育児放棄や子食いから逃れた子を育てるには、基本の温度管理の他、2時間おきの授乳や自力排泄できない子に排泄を促すなど、飼い主にはやることが山ほどあります。
プロのブリーダーさん並みの技術がない限り、生まれた子が丈夫に育つ確立は低く、短命に終わることがほとんどです。
よって里子に出すことはまず難しいと考えてください。
この子食いや育児放棄は、生後2週間が経てば発生率が低くなります。
しかし、絶対起きないというわけではないので注意は必要です。
最後に
いかがだったでしょうか?
何度も言いますが、繁殖を行うということは大きな負担と責任を負うことになります。
中には、お金儲けの為に繁殖を考える人もいます。
そこにしっかりとした責任が存在するならば問題はありませんが、その責任を無視し、利益を優先するならば、ハリネズミを飼育する資格は無いと言えます。
全ての飼い主さんが、小さな命に対する大きな責任と真っ向から向き合えることを願っています。